読了
- 作者: ヒラリーウォー,Hillary Waugh,吉田誠一
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2000/05
- メディア: 文庫
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これが名作の凄みか。作者の巧みさに驚く。
今まで意識しなかったことが色々見えてきた。それは警察の捜査が大変な手間がかかってるということだ。
この小説では主人公といっていい署長が、捜査の一つ一つを段取りして仕切る過程が丹念に描かれてる。当たり前なのに、今までこの大変さを肌で実感してなかった。一つ一つの疑いをなくしていく事のめんどくささが、読んでいると肌でわかった。アリバイの確認もどこでそれを疑わないものとするかの困難さ。さらに人員も多くない現場で、誰をどこの捜査に送るかということもこの署長が一人で仕切ってる。またこの小説の事件の謎も凄い。現場周辺の住民全てが怪しく見えるし、土地勘のない人間が犯人とも思える。誰が犯人かわからないことで読者をひっぱるのはミステリの手管だが、私は見事に続きがどうなるのか気になり引っ張られまくった。捜査が空振りするたびに、この徒労感にシンクロして署長に同情した。
結末は見事だった。この犯人像は私の好みの造型だ。
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