乃木希典 (文春文庫)

乃木希典 (文春文庫)

 あの将軍についてのイメージは私も「坂の上の雲」で固定化されていたんだが、本書を読み終えてそのイメージが変わった。特に桂太郎への振る舞いはちょっと印象を変えさせるものだった。
 だが妻への対応だけは納得できなかった。アカンやろ。やっぱり一人で終わらすべきだ。戦場で死地を求めていた彼の望みがかなえばよかったのにと思った。そしたら彼一人の死で終わらせられてたはずだ。
 でも本当に読んでみてよかった。読むのに時間がかかったけど、他人に理想を押し付ける無能な軍人というイメージを抱きつづけていた自分を恥じた。司馬史観にすぎないと頭でわかっていても固定化された印象を変えるのに個人的に結構葛藤があったが、自分の価値観の狭さを実感させられる作品だった。